個人投資のインフラ

個人投資のインフラがますます低コスト化を続けています。今月のITmediaの記事などにもまとめられていますが、ほとんど「信用取引の金利や貸株」以外の全ての取引手数料が無料になるトレンドが出てきています。(信用取引の金利は、借入金の金利が存在する限り存在するはずです。金利を上げる報道も出てきました)

 

2018/4〜2019/3の決算資料から証券各社の受入手数料をみると、

・SBI証券 約300億円

・マネックス 約250億円(半分は米国)

・楽天証券 約150億円

という数字が並んでいますが、米国でも手数料無料化の動きが10月から本格化していることから、これらの収益のほとんどは、前述の通り今後は見込まれません。

この影響を調べるために同時期の営業収益をみると、それぞれ下記の通りです。

・SBI証券 約1200億円

・マネックス 約500億円

・楽天証券 約600億円

会社によってはほぼ半分に及ぶなど、影響が大きいことが分かります。当然、オンライン証券各社は何か利益を補完するための変化を起こそうとするはずです。個人投資家の今後の暮らしに影響があるはずですが、どのような動きがあるのでしょうか。

(ちなみに、ITmediaでは、個人向けの対面アドバイザリー業務での収益を伸ばす、という米国の流れをリポートしてくれています)

各社が動きを考える際におそらく考えるであろう、市場の変化から推測を進めます。

<市場に起こりそうな変化>

・手数料が安くなり、個人投資に注目が集まる環境

・スマホアプリの操作性が年々高まり、口座申し込みもオンラインで完結する環境

・余暇が増えた人のうち一定数が投資を始める可能性

・個人投資家が増える(NISA口座も毎年増えており既にこの傾向がある)

・より真剣に自らの財務計画を考える人が増える

・信用取引の金利で稼げる機会が増える

・投資にまつわる知識や最新のニュースに対する注目度が増える

・より多様な銘柄を取引できる環境を求めるようになる

・個人投資家のコミュニティがそこかしこに出来始める

 

みなさんの思い浮かべる変化もこの中にあるのではないでしょうか。この予測があっているとすれば、各社はこの動きの中で競争優位に立てるように、自社のサービスを展開するはずで、具体的には、

・対面などで個人向けのアドバイザリーを行うサービスを増やす

・投資を考える際におすすめな考え方やニュースの配信をますます増やす

・増やしたコンテンツをスマホアプリからも見やすくする

・扱う銘柄を、日本と米国だけでなく、アジア、インド、ヨーロッパなどの市場に出回るものも含めるなど多様にする

・ベンチャー企業にまつわるものなど、今はない種類のものまで扱う有価証券の種類を増やす

・著名な投資家を招いてのコミュニティなどイベントを主催して、口座を開いていることへの魅力を高める

・・・などの変化が起こるのだと思われます。

そしてこれらのサービスの中から、「プレミアムなニュースは有料(月額料金なのか、従量課金なのか、方法は多様)」「他社の扱っていない部分の証券は取引手数料有料」「貴重なイベントは参加有料」などの収益化を目指す形になります。

この場合の競合はニュースアプリを配信する企業や勉強会系のイベントを企画する全ての企業になります。

また、これらの変化の起こし方は、単独ではなく、例えば「不動産会社と組んで、リートに組まれている不動産の本質価値をどう評価するか、業界の方の話を聞くイベントを開く」「宝飾品や芸術品などの企業と組み、トレンドを説明してもらうイベントを開く」など、他社との協力により、有料イベントは多数組み立てられるはずです。 

 

今のところ、アプリがちょくちょくアップデートされて使いやすくなったり、マネックスグループで個人投資家の活動を活発化しようとアクティビスト・フォーラムが開催されていたり、各証券会社も口座保有者向けセミナーを開いている程度ですが、このようなアクションはオンライン証券が顧客接点を活用して業績を伸ばすため、高い確率で行うのではないでしょうか。

個人投資家を対象とする事業は、手数料減少という向かい風を受けていますが、その顧客基盤を活かして今後急速に市場へ魅力的なサービスを届けてくれるのではないかと考えており、楽しみな業界です。