「のれん」の評価

企業のバランスシート(貸借対照表、B/Sとも表記されます)の無形固定資産の欄には、「のれん」という項目があります。このルーツは企業買収であり、例えばA社が株主資本50億円のB社株式を70億円で買い取った場合、20億円が「のれん」となって記帳されます。

大体の価値で言えば、株主資本=純資産=「資産の実態価値-負債」なので、その実態はB社の事業が作り出す製品・サービスの価値のうち、「原材料や設備など保有資産の価値-借入金」を上回る部分の価値の総額です。

すなわち、この値が大きいというのは、ビジネスの持つ顧客からの好評価やブランド価値が大きいということであると言えます。

これが小さいというのは、原材料・設備にほとんど付加価値をもたらせていないということだと言えます(もちろん、それが本質的に無駄な事業なのかは分かりません。製造業だと仮定すれば、設備一式を割高価格で購入してしまったのかもしれませんし、土地が高いのかもしれません。後者の場合は、運送コストの掛からない範囲で土地を移ることが出来るならそれだけで利益を高めることが出来るのです)。


この、まさしく無形の資産である「のれん」の扱いを巡る論争は何年にもわたって続いてきました。今も日本と世界の会計基準では扱いが異なります。

「のれん」は時間と共に価値を減らすものだから20年以内の期間で償却すべきだという日本基準。これは、のれんの実態がブームだというなら分かります。例えば、ヨーヨーやミニ四駆、タピオカを作る事業は、ブームの絶頂にはかなりののれん価値を持っていたことでしょう。(諸行無常の考えに共感する日本の文化に基づいていると言えなくもありません。)

かたや「のれん」の価値は永続的だから保全すべきだという国際基準。この考えも、コーラやカルピスのブランドがのれんの実態であるというなら分かります。コーラは19世紀、カルピスは20世紀初頭に売り出され、今も世界に知られるブランドとして原材料を上回る価値を持ちます。もしかしたらApple社も、革新性を想起させるブランド価値を長く保ち続けるかもしれません。


これらの比較からわかることは、どちらの会計基準がどのように適用されるべきなのか、一般ルールを作ることは難しいということです。

なぜタピオカから秀でたブランドが現れ、コーラのように広く普及する飲料にならなかったのか?なぜカルピスはコンビニに今も並び続けるのか?

考えてもよくわかりません。


会計士の能力というよりも、共通ルールを作ろうとする会計制度の限界なのではないかと思われます。

「のれん」を抱える企業の本当の利益を測る際には、事業の無形資産の持続性を見極め、個々の事業に適した計算を行うことが必要だと思います。