銀行による投資活動

近頃ニュースを見ていると、銀行が他の企業とパートナーシップを組み、企業への直接投資を行う取り組みが報道されています。(「銀行 ファンド設立」とGoogleで入力して、ニュース検索をしてみてください。記事が多く出てきます。)

この報道は、「経済が活性化するから良い」という解釈もできますが、日本の市民からすれば納税者の視点から考えるべきことがあります。それは、銀行の経営は政府によって保護が加えられているという明文ないし暗黙の了解です。

例えば銀行口座のお金は政府が大きく出資する預金保険機構によって、おおよそ1000万円程度保護されています。(公式サイト

口座の保護以外にも、これまでに銀行には10兆円規模のお金が政府から注入されてきました。もちろん「政府から」という場合、原資は税金です。(日経新聞の過去の記事

これまでのところ、日本では公的資金回収が元金以上にはなされていますが、例えば新生銀行は未だに完済できていないなど、現実にリスクのある資金供給であったことが分かります。(日経新聞の関連記事

 

かつてアメリカでは、金融危機(2008年のリーマンショック)の頃には税金をリスクにさらすことがないよう、銀行が自らのお金で投資活動することに制限を加えました。提唱者の名前を冠してボルカ―ルールと呼ばれるものです。(野村證券の用語解説ページ

銀行の安全な運用を求める動きはもう考慮しなくてよいのでしょうか。仮にリスクを取ることを解禁するのであれば、いざという時保証することになる政府に責任準備金を拠出することについて合理的な措置をとっているのでしょうか。

これについて調べてみると、預金保険については、預金保険機構の責任準備金が増えている(現在4兆円ほど)こともあり保険料率を引き下げていることが分かりました。しかしその他、経営リスクに対する責任準備金を新たに設けるような動きに取り組んでいることは特段見当たりません。過去の公的資金投入額を考えて、預金保険機構の責任準備金があるから十分とは言えません。

つまり投資活動が活発化する現状は「銀行の経営リスクが高まっていくのみ=税金がリスクにさらされる確率が高まっていくのみ」という状態なのです。

 

銀行による投資には、資金の出し手である預金者がそもそも投資活動を想定していないという問題も抱えています。投資信託を買うでもなく銀行口座にお金を預けている人は、安全第一に運用されていると思っているから預けているのであって、投資でリスクにさらされているというなら、リスク相応のリターン(例えば預金金利を上げるなど)を求めてしかるべきです。実際、普通預金口座に1000万円を大きく超える金額を預けていて銀行が倒産すると、超えている分の預金を保証するルールは存在しないのです。

しかし銀行の普通預金金利が上がる動きは見当たりません。

銀行による投資活動には、銀行経営の安全性(=政府がリスクある公的資金注入を行わないで済む安全性=税金をリスクにさらさないで済む安全性)を減らさないような基準を検討するべきで、その結果は適性な与信判断に基づく債券取引(つまり貸出)に落ち着くのではないでしょうか。

「日本の投資活動を盛んにするのだ」と、それ自体は問題ない理念が関係者にあるのかもしれません。しかしもしそうなのであれば、銀行に投資を認めるという「預金者の期待や税金の安全性を傷つける」手法ではなく、例えば義務教育に金融知識を高めるコンテンツを入れ込むような、自発的な行動を促す政策がふさわしいのではないでしょうか。